大空ひろしのオリジナル小説

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過去から今日は 23

 和雅が両親に会いに来た用を済ますと、駿人は和雅を自分の部屋に連れ込んだ。
「和さんは奈未という女の子を知ってますか?」
「知ってるよ。美人な子だよな」


「名字は何て言うんですか?」
「確か、峰村とかだったと思うよ。駿君はその子に会ったことあるのか? まさか、一目惚れしたって言うんじゃ無いだろうな?」
 ああー、この兄も遠慮無くズバズバ言ってくる。妹の成美と同じだ。


「一目惚れとまでは行かないけど、まあ、それなりに」
「止めときな。成美の話だとかなりイケメンに夢中らしいから」
 和雅の言葉は、かなり失礼だ。暗に、お前はブスオだからとても太刀打ち出来ないと言ってる。
 駿人自身は、そんなに醜男とは思っていない。ただ、鏡をじっくり見ないようにしているが。


 気にせずに、
「それなんですよ。実は奈未さんの妹が、そのイケメンホストの事で心配しているんですよ」
「何だ、相手はホストか」


「そうなんです。お金は使うし、貢いだ後はぼろ切れの様に捨てられるんじゃ無いかって」
「気持ちは分かるけど、恋狂いした人間を冷静にさせるのは相当難しいぞ」


「分かってます。でも、自分に出来るものなら何とかして上げたい」
「そりゃ構わないけど、ああいう世界には関わらない方が良いと思うな」


「やっぱりそうですかね」
「人助けしたい気持ちは分かるが、奈未君にとっては迷惑かも知れないしな」


「ですね。でも、そのイケメン野郎がどう言う人間かぐらいは知りたい」
「駿君は、そいつを全然知らないんだろ?」


「名前も何もかも知らない」
「駿君の気持ち、分かったよ。俺にそいつの情報を調べて欲しいんだろ?」
「うん」
「俺は情報を持ってないけど、成美に聞けば知っているかも知れない。今度会ったら聞いてみる」


 無駄では無かった。物事はしつこく追って見るものだと思う駿人。


 返り討ち


 駿人は今、某ホストクラブの近くに居る。
 和雅や成美兄妹の助力を得て、やっとこの店に辿り着いた。そして今夜は、奈未が例のホストと逢う日。


 奈未は、昼間は普通の会社。休日の夜は会社に内緒でバイトをしている。好きなホストをつなぎ止めておくにはお金が必要。
 とはいえ、奈未は十分なお金を稼いでは居ない。なので、恐らくホストにしてみれば、奈未はかなり順位が低い相手なのだろう。
 それでもホストにしてみれば、客がいない時の都合の良い女ではある。なので、軽々に捨てはしない。


 駿人はホストクラブが見える位置に佇み、入り口付近に視線を向けている。ただそれだけ。
 これから先、どうしてやろう何て全く考えていない。とにかく、店が立ち並ぶ繁華街の喧々囂々とした雰囲気に気後れしている。
 お酒の好きな人なら、こういう雰囲気を楽しめるのだろうが、駿人は苦手だった。


 何気なく視線を置いていたホストクラブの入り口から、一組の男女が現れた 奈未である。男は彼女がお熱なホストだろう。
 男は奈未の肩に手を回し、彼女を抱き寄せるようにして歩いている。これからホストの部屋に行くのか、それともラブホテルに入るのか?


 奈未が嬉しそうに微笑み、時々ホストの顔を覗く姿に、駿人は激しく嫉妬する。
そうこうするうちに、二人は駿人の居る方向に来るでは無いか。