大空ひろしのオリジナル小説

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今日から今日は 27

 甘味処喫茶。
 美奈は美味しいと言うより嬉しいというような笑顔。
(やっぱり、若い子の笑顔って最高だな)
 駿人も美奈の笑顔にほっこりする。


「美味しいー」
「良かった。沢山食べな」
「うん。彼も甘い物が好きだったら良かったのにな」
(うん? 彼? 今、彼と言ったのか? 聞き違いか?)


「私の彼って、小学校からの幼馴染みなんだけど、一度もこういう店に一緒に入ったこと無いんですよ。そこだけが私と全く合わないんです。もう、付き合い長いんだから、私の甘い物好きを分かってくれても良いと思うんだけど」


 美奈の言葉に何も返せない駿人。思わず、今の自分の顔がどんな表情をしているか焦る。


「彼氏とは、小学校時代からズーと変わらず付き合ってるんだ?」
「高校時代は殆ど合わなかったけど、卒業後、また会って元通りになったんです」


「そうなんだ。彼は優しい?」
「時々そう感じる時もあるけど、付き合い長いから、彼と一緒だと安心できるんです。勿論、口げんかも偶にしてるけど」


「そう。何れ結婚するんだ?」
「結婚ですか? 未だ考えていないけど、彼となら問題ないです。お互いの両親も知っているし」
「そうだね。よく知り合って結婚するなら、きっと言い家庭が出来るとおもう。幸せになれるよ」
 そう言う他無い駿人。心の中は涙が溢れている。



「よう。やはり甘くなかったな。甘味喫茶のデートだったのに」
 静子だ。
「駄じゃれか? ちっとも面白くないぞ」
「でも駿は偉いとこあるよ。虚しい気持ちを抑えて、相手を祝福するような言葉を贈ったんだから」


「慰めにはならないけど。でも、それにしても俺って不幸だなー」
「何言ってんの。未だ十分若いじゃ無い。男なら30歳前後でも結婚遅くないんでしょ?」


「俺、結婚諦めようかな。何かフーテンの寅さんみたいだな」
「フーテンの寅さん? 誰それ」


「女性に直ぐに惚れてしまい、最終的に振られるパターン。映画の中の主人公」
「ハハハハー。駿そっくり」
「笑うなー」


「駿。茉莉の事はもう良いの? 彼女に新たな彼氏はいなかったんじゃなかったっけ?」
「茉莉? もう彼女とは駄目だよ」
 自分に相当自信が無いのか、段々弱気の虫が出てくる駿人。


「分かんないでしょ。もう一度会ってみなよ」
「だってさ、もう彼女、バイクロードコースには走りに来ないだろうし、どうやって会えば良いんだよ?」


「そうね。ウチが探してやろうか?」
「別にいいよ。現実を突きつけられるのは辛いから」
「探さなくていいのね?」
「うん」


「しっかりしなさいよ。あんた幾つよ。これからでしょ」
「そうだね。ねえ、1人にさせてくれる?」
 静子は大きな溜息を吐き、消える。


【此処までで一旦終了です。ここのところ仕事や雑用に追われ、ストーリー構想を落ち着いて寝れなかったので】